パスカルの葦笛のブログ

クラシック音楽のテレビやFMの放送からその演奏を視覚(楽譜)で再現します。後から読むだけでどんな演奏だったか理解出来ます。

メンデルスゾーン交響曲4番ヤニック・ネゼ=セガン指揮ヨーロッパ室内管弦楽団

いよいそメンデルスゾーンの現代の決定盤が出た。翻訳の生命は50年で、それが過ぎると古くて読めなくなり新訳が必要になるという。往年の名演も新しい演奏に切り替わる必要があるという。それにしては、なかなか往年の名演に切り替えられないのが、翻訳と違うところだ。
 そしてヤニック・ネゼ=セガンの指揮した「イタリア」で、演奏が一新した感がある。トスカニーニもアバドも必要なくなった。あの辺の演奏は一新されたのである。2016年のヨーロッパ室内管弦楽団による新録音である。「音楽の泉」は新譜紹介という意味があるのだろう。


第一楽章。
25-27小節のコントラバスはアルコ記号があり、弓で引けという指定である。

実は豊田耕児指揮群馬交響楽団の演奏では、ピチカートの演奏になっている。


豊田はメンデルスゾーンの自筆譜にあたり、従来のアルコ記号はピチカートの誤りであることを発見して是正したと言う。今もって新鮮な響きを失わない演奏であることを指摘しておきたい。


261-262小節のテインパニで、ネゼ=セガンはクレッシェンドとアクセントを付けて演奏させて独自な味を出した。

この演奏は彼の従来の凡百の演奏を一新させたいという意志が読み取れる。


336-344小節の低弦の扱いで、豊田とネゼ=セガンとが、9小節にわたってfで強奏させている。

豊田はこういうオーソドックスなヨーロッパの味を群響に導入したわけだが、改めてネゼ=セガンの演奏でヨーロッパの正統派の味だったのかと再認識させられた。


471-475小節のバイオリンで、ネゼ=セガンはアーテイキュレーション(色ずけ)をして見せたのには驚かされた。

ネゼ=セガンは、471小節でfは楽譜通りだが、後半でppに弱奏させるや、473小節後半でまたfに転じて強奏させたのである。


この巧妙な演奏は余人には足元にも及ばないもので、決定盤現るの感を思わせた。


さらに驚くべき演奏は第二楽章であった。
35-41小節の第一バイオリンの演奏であった。

37、41小節の1拍の音にアクセントとフェルマーとを付けて演奏させた。


古楽器奏法では、音量一杯の均一な響きが演奏されるのだが、一見ネゼ=セガンは古楽器奏法で演奏しているように聞こえる。古楽器風というのが正確であろう。


何故この2つの音符が古楽器奏法で音が引っ張られるのか。


前2つの音符(38、40)と等価の音符ではある。


しかしネゼ=セガンは異常に長く引っ張る演奏をしたかっただけ、か。


これは大きな謎である。面白い演奏であることだけは間違いない。


CDを買って、お聴きあれ。


なお青色鉛筆は、豊田指揮群馬交響楽団の演奏である。