時代錯誤のシンバルを加えたヤノフスキのブルックナー交響曲第八番
ヤノフスキはなぜ時代錯誤で悪しき伝統と言われたシンバルの加筆を、クナッパーツブッシュは1回なのに2回も演奏させたのか。彼は確信犯である。
今夜のNHKFMのベストオブクラシックは、マレク・ヤノフスキ指揮ドレスデン・フィルでブルックナー交響曲第八番の演奏であった。(2019・8・31)
ブルックナーは心に実のない人が意外に素晴らしい演奏をする。カラヤンやチェリビダッケのブルックナーがいい。こんな人が何でカソリックだ宗教性だという精神性の高いブルックナーがうまいのだろう。
反対に心に実のある人がつまらない演奏をする。ブルーノ・ワルターがそうだ。この人こそがブルックナーに最適なのではないか。
ヤノフスキであるが、心に実のないカラヤン型に属し、ブルックナーの演奏がいいのだ。
第二楽章。
48-49小節で、突如リタルランドを掛けた。
まず余人はこんな場所で解釈を与えないが、独自の味を出し始めたのだ。
第三楽章。
56小節のクラリネットの演奏するメロディーの最後にリタルランドを掛けた。これもユニークな解釈だろう。
ヤノフスキの個性が次第に出てきた。
最大の個性は、239,243小節の解釈であった。
239小節は、ドイツの古い指揮者の第八番の演奏の常套手段とされた。楽譜にないシンバルの加筆をして演奏するが伝統であった。
ブルックナーの良き友シャルクの提案でそうなったとされている。一方悪しき伝統と非難されてもいる。クナッパーツブッシュも実際シンバルを加筆して演奏させてもいる。
さてヤノフスキのであるが、243小節でもシンバルを加筆していて、2回も演奏させているわけである。これは彼の独自路線である。
ここがこの音楽の白眉となったことは間違いない。
第四楽章。
40小節前後のバイオリンの切れのよい演奏は秀逸であった。
158小節の後半でリテヌート(急にテンポを落とす)を掛けた。
462小節の後半でも、同様のリテヌートを掛けたことに言及しておこう。
そしてコーダでやはり極端なリテヌートを掛けて、この大曲を終結したのである。
ドレスデン・フィルという二流オーケストラのために、ヤノフスキには思い通りの解釈が可能になったのではなかろうか。それが幸いした。
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