フィナーレで大どんでん返しをした尾高忠明指揮大フィルのブルックナー第三番
尾高忠明はブルックナー交響曲第三番フィーナーレで大どんでん返しの意匠をこらした解釈を提示した。あるいは小林亜星のちゃぶ台返しと言ったらいいか。あっぱれと言うしかない。
今夜のNHKFMは、尾高忠明指揮大阪フィルによるブルックナー交響曲第三番「ワーグナー」の演奏であった。(2020・1・16)
第一楽章。
159-160小節、159小節にテンポを落として演奏させたが、そうなると4つ同じような和音が並んでいるよな演奏になってしまうが、マタチッチ(ウイーン響)は3つの後にブレス(間)を入れて159小節と160小節の違いを演奏させていたが、まったく尾高が踏襲しているのだ。
尾高はこういうセンスの良さを随所に見せていた。
320小節のトランペットでもラレンタンドしてテンポを落とさせた。
627小節のフルートでもラレンタンドしてテンポを落とさせていた。やることはやっているのだが、いささか温和過ぎないかという気がしないではない。
第二楽章。
198小節の第一バイオリンで3つの8分音符にマタチッチ同様ラレンタンドを掛けた。
第三楽章。
119-120小節で、楽譜には後半にsf記号が付いているのだが、尾高は前半をpで演奏さた。前半と後半の対比を示したのだが、この解釈はどうも尾高のオリジナルらしい。洒落た味が出ていて、評価したい。
第四楽章。
ここがこの演奏の胆になったようだ。
450小節だが、クナッパーツブッシュとかベームとかの熱演の場所になっている。
450小節で、尾高は大胆なリタルランドを掛けたのである。温和な尾高が狂乱したような大どんでん返しをした。確かに小林亜星がドラマでちゃぶ台返しをして、今までの成り行きと正反対な方向に転換する効果が、発揮されたのである。尾高がちゃぶ台返しをした。
尾高の独壇場ともいうべき演奏はさらに続いたのである。
尾高は、478小節のテインパニの4分音符3つをリテヌートで打たせたのだ。
確かクナッパーツブッシュがそうしているのだけれど、何故尾高はここでクナに同意したのか、興味深々な問題である。
最後に終結で、大きなリテヌートを掛けて、尾高は演奏を締めくくった。
この大胆な終結は効果てき面であった。
とうとう尾高もブルックナー指揮者の定評を獲得したと言っても過言ではない名演であった。
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