ドボルザーク交響曲9番渡辺一正指揮東京フィル
一点非の打ち所のない名演とさえ言えるものだった。世界の名匠・巨匠がやる技術は総て持ち合わせており、これ以上はないという見せ場すらあった。大阪で文楽が受けず志ん生が大受けというのは、大阪の客が悪いということになっている。最後の盛り上げを欠いたのは渡辺に責任があるかなということはあるが、世界の名匠・巨匠はそれで大受けしているわけだから、渡辺がそれで受けないというのは合点がゆかない。というのが総括である。
今夜は渡辺一正指揮東京フィルでドボルザークの交響曲9番の演奏であった。(2021・2・14)
第一楽章。
148小節で、大きくテンポを落としたのは匠の技とさえ言えるであろう。
これは369小節の再現でも同様だから、アゴギーク(テンポの伸縮)の出来る指揮者だということになる。
第二楽章。
20小節のクラリネットでやはり大きなテンポを落として演奏させたが、19小節の対比となって面白い演奏になった。
眼を見張ったのが、95小節の解釈だった。
95小節のトランペットで、渡辺は最後の音型にリテヌートを掛けて演奏させた。これはビオフラベックがやっていて、いわば本場のニュアンスというべき格別な味が引き出させた。
こういうことがやれるのは彼も巨匠クラスの指揮者ということであるかも知れない。
第三楽章。
122小節のテインパニであるが、渡辺はfffで打たせていてこれは独創があった。
ダイナミックな音がして効果てき面であつた。凄みすら感じた。
第四楽章。
106-109小節のホルンで、4つのアクセントを独特の粘着のある音で演奏させたのが、マタチッチと渡辺であつた。
139小節のテインパニも独特な打たせ方があった。後半はトレモロがテンポが落ちて木管の3っの8分音符に符合した音を打たせた。弱冠テンポが落ちるような感の揺れが何とも言えない効果を出した。
マタチッチの名前が出てきたので、渡辺との相性を言えば、225小節のコントラバスのfの凄みのある音は、渡辺はマタチッチに学んだと言えそうだ。
ともかく低弦のこれでもかと言う強調が効果的であった。
以上聞いてみると、これは率直に名演だったのではないか。
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