パスカルの葦笛のブログ

クラシック音楽のテレビやFMの放送からその演奏を視覚(楽譜)で再現します。後から読むだけでどんな演奏だったか理解出来ます。

自然皮のティンパニの音甦る屈指の名演マタチッチ「レオノーレ」第三番

この演奏の最大の魅力は自然皮の昔懐かしい玄妙な響きがするティンパニの音だ。ベートーベンはこの音を聞いて作曲したのである。それにホールの響きがいい、録音は当時としては驚異のステレオ録音だ。この好都合をさらに上回るマタチッチの名演が良かった。三拍子、四拍子揃った名演だった。


今宵のN響ザレジェンドは、マタチッチの新潟公演の全曲が演奏された。(1967・11・25)その中で最高の名演はベートーベンの「レオノーレ」序曲第三番の演奏であった。


この曲はかなりティンパニが活躍する曲で、はからずもその魅力を堪能した。


例えば、94,98小節のティンパニでは、f記号の指定された音のみがフォルテで演奏されたが、まず自然皮の魅力的な音に感動した。


そして272小節のトタンぺットのソロでは、マタチッチは舞台裏で弱音で演奏させていた。


フロレスタンを救出にやって来た軍隊が遠地まで来ているという軍隊ラッパの音だ。


やがて城壁近くに軍隊が来て、トランペットの音が強く聞こえる。


その前290小節で、マタチッチは一小節ごとに、p・mp・mf・fの強弱を付けて演奏させた。そしてトタンペットのソロに突入するのである。巧妙な演出をするものだ。


E記号からマタチッチの巧みなアゴギーク(伸縮)が始まり、テンポ1でラレンタンド(ゆっくり)と演奏され、316小節からポコ・アッチェレランド(少し速め)、326小節からアッチェレランド(速く)に転じた。ここなどがこの演奏の山になったのである。


そして372小節のティンパニの後半でfかffの音に変じて、感銘深い演奏になった。


最大の効果は600-610小節の解釈だった。


やはりマタチッチは604小節のテインパニでfで打たせて、608-609小節のトランペットに2小節にわたる巨大なクレッシェンドを掛けて、ダイナミックな演奏となった。


このクレッシェンドはフルトベングラーなどもしているのだが、604小節のティンパニのfの演奏などを加味すると、フルトベングラーを超えているとさえ言えるのではないのか。


ということでマタチッチの「レオノーレ」序曲第三番は、未曾有な名演となった。