パスカルの葦笛のブログ

クラシック音楽のテレビやFMの放送からその演奏を視覚(楽譜)で再現します。後から読むだけでどんな演奏だったか理解出来ます。

モーツアルト交響曲29番スダーン指揮東京交響楽団

スダーンのライブのCDの演奏というから、スダーン本人のリクエストによるCD化なのだろう。彼のキャリアの中でも自分の業績になる名演だったのだろうが、世界的にみて29番の名演の中でも屈指の名演であったことは間違いがない。


2006・2・25の演奏会の録音で、CD番号は(TSOCD-003)。


第一楽章。
演奏が始まってすぐ、名演の兆しが現れた。10小節の第一バイオリンをpに抑えると11小節後半からクレッシェンドした。

19小節の後半でpにし、20小節ではクレッシェンドにし、21小節前半でfに到達すると、今度は後半でpに転じたのだ。


上記の桃色の色鉛筆はカプアーノの演奏だが、それと比較してもスダーンの個性が発揮された。


34小節の4拍目の4分音符をスダーンはpにしている。


188小節でもいささかスダーンはテンポを落とした。カプアーノがデイミヌエンドにしたところだ。この解釈は甲乙つけがたいものがある。


第二楽章。
24小節の第一バイオリンの後半で、スダーンはラレンタンド(テンポを落とし)、25小節に入ると元のテンポに戻した。これもユニークだ。


第三楽章。
ここにスダーンの輝くユニークさがあった。
トリオに入ると、8分音符にフェルマータを掛けて、かなり音を伸ばすのがジャンドロンとスダーンであった。

それはいいとして、スダーンは13小節の第一バイオリンで、8分音符にフェルマータを掛けたのである。前人未到というか類例のない解釈に出たのである。


このユニークさは、ジャンドロンの物まねでは終わらないというスダーンの覚悟である。まあ余人の思いもよらないもので、一発がましてやろうという遊びでもあろう。


というわけでスダーンのモーツアルト演奏は29番の古今の名演奏に強い爪跡を残したのである。