パスカルの葦笛のブログ

クラシック音楽のテレビやFMの放送からその演奏を視覚(楽譜)で再現します。後から読むだけでどんな演奏だったか理解出来ます。

ブラームス交響曲1番鈴木優人指揮NHK交響楽団

かなりヤバイ人だ。「題名のない音楽会」に出演する音楽家は温厚実直な好人物ばかりだが、そこに出演した鈴木優人もそのようであった。しかし今夜の指揮者鈴木優人はそれでは収まり切れないものを持っていた。毒を持った人物だからこそ、N響を制圧して自分の色を出せたのであろう。やはり好人物では伏魔殿のような巨大組織は統率出来ない。老練な音楽知識から引き出される、対位法(二つの旋律を同時進行させるという)を駆使した独特な演奏法を披露した第三楽章は光っていた。


今夜はNHK交響楽団定期演奏会の生中継であった。(2021・1・27)


第三楽章。
この楽章の演奏が光っていた。

クラリネットとホルンだが、異なった旋律を演奏しているのだが、どうしても指揮者にとっての主旋律を選択して、副旋律に泣いてもらって沈んでもらわなければならない。


鈴木優人は異なった旋律を同時に対等に演奏させた。結果は散漫になりかけないわけだが、おそらく古楽器演奏の影響で、対位法として理解したのであろう。ブラームスの対位法を洗い出した功績はある。


実際に二つの旋律が演奏されるのは集中出来ないのだが、今回はあえて対位法を前面に出した。そういうことでは新鮮であった。


40小節以下、引用は45小節だが、ホルンと第一バイオリンが対位法になっている。

鈴木はホルンにfとpの組み合わせで3回繰り返した。


115-120小節、今度はクラリネットとホルンが対位法になっている。


このように対位法を駆使した第三楽章の解釈は独特なものがあった。


第4楽章。
ここにも対位法的解釈のすばらしい演奏があった。


132小節以降で、オーボエと低弦との対位法的演奏であった。

驚くべき演奏は、289小節だ。


ホルンとチェロとが異なった旋律を演奏するのだが、チェロの旋律を初めて耳にした。

チェロが今まで聞いたことも無い旋律を演奏しているわけで、指揮者としてはこうした人は最初の人で、圧巻であった。


よくオーケストラに言うことを聞かせたものだと感心する次第である。