パスカルの葦笛のブログ

クラシック音楽のテレビやFMの放送からその演奏を視覚(楽譜)で再現します。後から読むだけでどんな演奏だったか理解出来ます。

リヒアルト・シュトラウス、アルプス交響曲ドレバンツ指揮バーゼル交響楽団

今夜テレビで橋田寿賀子(95)の訃報があったが、ハンス・ドレバンツ(1929-)は今91歳だそうである。指揮者もオーケストラも二流でなおかつ超高齢どうなることかと聞くと、これが面白かった。定石の分節法(フレーズを切る所)は指揮者が高齢なため耳が遠いことでゆっくりはっきりでするので、きわめて聞きやすい演奏になっている。CDロムに焼いて楽譜を見ながら聞くには最適なものになった。(その価値はある。)ウーバーイーツの配達人のような曲芸の多いリヒアルト・シュトラウスの演奏は、演奏を追いかけるので精一杯である。ぜひ楽譜の伴侶にしたい名演だった。


今夜はリヒアルト・シュトラウスのアルプス交響曲ドレバンツ指揮バーゼル交響楽団の演奏であった。(2018・5・16)


練習番号1前4小節のテインパニを、ドレバンツはクレッシェンドで開始して、楽譜指定のクレッシェンドでさらに速めた。前1小節の管楽器で、前3つの4分音符にリタルランド(斬次テンポを落とす)を掛けて、1の両4分音符にリテヌート(即テンポを落とす)を掛けたのである。

もはやこれで名演奏であることはここで定まったと言えよう。


練習番号31からテンポを落とした。57からのバイオリンの演奏もなかなかのものがあった。


練習番号80の金管の処理にも巧みさが目立った。

金管のブレスやテインパニの掛け合いにも一工夫があり、とても高齢者の演奏とは言いきれないものがあった。


練習番号84前3のトランペットで、ドレバンツは後半3つの4分音符にリタルランドを掛けて演奏させたのであるが、91歳の老人とは思えない繊細な解釈である。

後ろのアクセントなども明快に区切っていた。


練習番号135-136のフルートなど卓抜な解釈を示していた。

91歳の高齢者とは思えない細心の配慮だといえよう。


さてこうして曲は終わったのであるが、立ち上がって聴衆に挨拶すると、例の池袋の元技術院長の事故検分ではないが、とても運転出来るような状態でない人の姿のようによぼよぼで、こんな人がリヒアルト・シュトラウスの難曲・大曲を指揮したのかと聴衆がのけぞる姿が見えるような閑散とした反応であった。


バーゼルの聴衆はその姿に騙されているのだ。内容はピカ一であった。