パスカルの葦笛のブログ

クラシック音楽のテレビやFMの放送からその演奏を視覚(楽譜)で再現します。後から読むだけでどんな演奏だったか理解出来ます。

なかなかユニークだった小林研一郎指揮東京フィルのチャイコ4番

小林研一郎の80歳記念で春チャイコフスキー4・5・6番の連続演奏会が開かれる予定であったが、パンデミックで中止になった。4番はそれとは別の演奏会なのだが、もしあったら・・・コンサートなど21年までありえない、としたら俄然貴重な演奏となってしまった。


今夜は、小林研一郎指揮東京フィルで、チャイコフスキー作曲交響曲第四番の演奏であった。(2020・2・11)この時点で、その後日本が世界が一大事になろうとは夢にも思わなかったハッピーな日々であった。その頃に帰りたい。そういうノスタルジーが詰まった演奏でもある。


さて、演奏それ自体はなかなかユニークな解釈に満ちていた。


第一楽章。
176小節のテインパニに、小林研一郎はポコ・リテヌート(少しテンポを落とす)という指示を与えていた。

そのためにつんのめるような演奏になって、後期ロマン派の味を出していた。


第二楽章。
274小節で、チェロからファゴットに旋律が受け継がれるのであるが、ここもユニクな解釈であった。


楽譜を見ると、音符の長さは間髪入れず受け継がれるようになっている。


小林研一郎は、明白にかつ意図的に、チェロからファゴットに旋律が受け継がれる時、8分休止符を入れて沈黙させたのである。前節で終わり、ファゴットから新しい旋律が始まるという解釈をした。これはユニークな解釈であった。


第三楽章。
ここにもユニークな解釈があった。169小節と170小節(Tempo1)ではテンポが変化する。そこで小林研一郎はラレンタンド(テンポを落とす)して、170小節の基本テンポと調和させたのである。


167小節で速くなっている速度を落として、170小節の基本テンポに調和させたのである。


これなども老巨匠ならでわの老練な手腕といった御手並みであろう。


こういう演奏の円熟味の披露がパンデミックのために記念演奏会が中止され、さて再開の目途がつかないとなると、ますます貴重な記録となったわけである。