パスカルの葦笛のブログ

クラシック音楽のテレビやFMの放送からその演奏を視覚(楽譜)で再現します。後から読むだけでどんな演奏だったか理解出来ます。

己のベートーベンに異常なほど自信がある指揮者ティエリー・フィッシャーの7番

己を貫いたという意味では、確かにベートーベンの7番の演奏は成功したと言える。今の指揮者の中ではこの人が一番フォルテ(f)の音が大きいのが証明された。フィッシャー・フォルテと称される名物を発明したわけだ。また十分堪能したわけである。


今夜のべストオブクラシックはティエリー・フィッシャー指揮ブリュッセル・フィルでベートーベンの交響曲7番の演奏であった。(2020・2・14)


第一楽章。
87小節以降は、ホルンの演奏が聴き所であるが、この演奏ではテインパニの演奏であった。


当然ホルンの演奏はテインパニの演奏にかき消されてしまったが、迫力はその数倍となって跳ね返ってきた。このメイン・テーマが聞こえなくても良いという自信がフィッシャーの売りであろう。


フィッシャーは低音弦の詳細な強調とテインパニを強打することを、ベートーベン演奏の要と信じているわけである。この異常な確信が演奏を成功させたと言えよう。


指揮者の確信は楽団員に異常な緊張感を生んで、例えば164小節のテインパニで、2拍目の4分音符がどういうわけか打ち忘れている。ダ・カーポでは楽譜通りに打たれているから、単純なミスということになろう。


打楽器奏者が打ち忘れるほど、フィッシャーが要求が強いわけで、この緊張感が逆に一種の名演に繋がった。


この指揮者は和気合い合いに練習をする人ではなく、真剣勝負で触れば手が切れて血が出るような対決を要求する人なのだろう。


第一楽章と第二楽章は切れ目なく演奏されたが、これも異常といえば異常であろう。
最後の270小節の第一バイオリンのアルコを、ffで際立たせる演奏はなかなか良かった。


第三楽章。
24-25小節のテインパニを、f指定をffで強調したのもフィッシャーの意志を感じた。


ffで強打するというのも、フィッシャー・フォルテの特色になった。


一通り聞いてみると、フィッシャーはテンポを変えない指揮者であることに気づいた。ダイナミクスで演奏を聴かせるタイプの指揮者である。そう思うと何か彼には一貫したポリシーがあることが浮上してきた。