パスカルの葦笛のブログ

クラシック音楽のテレビやFMの放送からその演奏を視覚(楽譜)で再現します。後から読むだけでどんな演奏だったか理解出来ます。

ウィーン情緒てん綿たるロイブナー指揮N響のベートーベン「田園」

ベートーベンの田園交響曲がウィーンの自然に限定されるわけではないが、そこに住んだベートーベンの心象風景はウィーンの郊外の田園風景だということになる。そうなるとやはり彼の心に映った風景を再現して欲しいとなると、限られてくる。打ってつけの人がロイブナーということになる。


今夜のN響ザレジェンドは、ロイブナー指揮N響で、ベートーベンの交響曲6番「田園」の演奏であった。(1957・4・3)


第一楽章。
冒頭の旋律で、ウィーン風の解釈がなされた。


色々な指揮者がまず解釈を披露するが、ロイブナーはウィーン子らしく3-4小節の後半で2つの16分音符からレレンタンド(テンポを落とす)をした。そして11小節のfを忘れず強調すると、14小節の最後でpに抑えた。こういう演奏するとロイブナーが正真正銘のウィーン子であることを証明したかたちになった。


95小節のホルンで、3つの8分音符をfで演奏させている。このホルンの音型はロイブナーは強調して演奏させている。個性が希薄ともいえる人にしてはこだわっている。


362-365小節のホルンもロイブナーは強調していて、ホルン偏愛の傾向があるようだ。


第二楽章。
49小節のバイオリンで、スラーは基本的には強弱で演奏されるとされているが、定石通りの演奏をさせてもいる。


111小節の再現でも同様なニュアンスを付けさせている。


面白い解釈は、129小節のフルートのナイチンゲールのサエズリである。133小節でも再現される。楽譜には、cresc,と印刷されているので、ダイナミクスはmfかfの強さが求められているのだが、ロイブナーはそうしておいて、次の音ではppの弱音でフルートに吹かせて、三番目の音はpで音が大きくなっている。引用楽譜の写真の失敗でお見せ出来ないのが残念である。
 ロイブナー最大のユニークな解釈である。ウィーンのナイチンゲールはこう鳴くのだとロイブナーが言っているようだ。


第四楽章。雷雨と嵐。
ロイブナーはpppで弦を始めている。23、29,31小節をsfで切ってテインパニを打たせている。効果てき面でである。


52-53小節のテインパニは、先輩のワルターとウィーン・フィルの演奏に敬意を表してロイブナーとN響はテインパニを加筆して演奏させた。


これは非常に効果的な修正であろう。
とりわけロイブナーのこの楽章の演奏はすばらしい。


第五楽章。
11小節第一バイオリンで、ロイブナーは、どういう理由か、戦後なのにポルタメント奏法をN響にやらせているのだ。


なぜあえて、ロイブナーはN響にポルタメントをさせたのか。


そういえばワルターは戦後ウィーン・フィルとの演奏で、戦前にはポルタメントもさせていなかったのに、モーツアルトの40番の冒頭のむせび泣くような旋律をポルタメントで演出したのである。


ロイブナーとワルターの戦後のポルタメント奏法は二大不可解と申さねばならなかろう。確かに俄然ウィーン風の味わいが出た、のではある。