パスカルの葦笛のブログ

クラシック音楽のテレビやFMの放送からその演奏を視覚(楽譜)で再現します。後から読むだけでどんな演奏だったか理解出来ます。

オーケストラのストラデイバリウス奏でる絶品の名演ティーレマン指揮ドレスデンのマーラー3番

リヒアルト・シュトラウスをして世界最高峰、フリッツ・ブッシュをしてオーケストラのストラデイバリウスと称するドレスデン国立歌劇場が、テイーレマンの指揮で両巨頭の面目を新たにした。第6楽章はシカゴ、ベルリン、ウィーンも及びもつかない絶品の名演を演じた。


今夜のベストオブクラシックは、テイーレマン指揮ドレスデン・シュターツカペルレでマーラーの交響曲第三番の演奏であった。(2018・2・27)


マーラーの8番の初演100周年記念で、ミュンヘン・フィルを指揮したティーレマンは、いよいよ3番でマーラー指揮者として自らを解禁したようだ。ティーレマンとマーラーとはそぐわないようであるが、15歳まではワーグナーとマーラーに心酔していたという。そこにブルックナーが入ってきて、二人を考えるに、自分にはブルックナー指揮者の方が相応しく、マーラーを禁じ手にして封印したのだそうである。いよいよ封印されたマーラーが甦るわけで、聴衆の一人としては慶賀に堪えない。


何と言っても、第6楽章こそ神業に近い絶品の演奏であったことを報告しなければならない。

第3番は全曲を通してマーラーのブラームスへのオマージュ(尊敬)に貫かれているわけで、とりわけ6楽章はブラームスの1番のオマージュになっている。オーケストラは単純に楽譜を再現しているだけなのだが、そこにオーケストラのストラディバリウスと呼ばれた面目が生きている。解釈など不要で、名器を弾くだけで名演奏になっているという稀有な事例である。ドレスデンの音を堪能するだけで良い。エルマンとかクリスチャン・ヘラスとかストラディバリウスを弾くだけのバイオリニストがいたが、時に楽器弾きだけで通用する音楽家がいた。ストラディバリウスの音が聴きたい。ここはドレスデンのストラディバリウスの音をご堪能あれと言いたい。


第一楽章。
ティーレマンという奇才だけに、解釈に深味があるのは否定し難い。練習番号1の前4小節のホルンでテイーレマンは2つの8分音符にリテヌート(テンポを落とす)を掛けた。



もうこれだけで、テイーレマンがマーラー指揮者のお墨付きが出たとさえ言える解釈であった。古今東西のマーラー指揮者ですら、こういう解釈には出まい。


33の前後だが、2小節のテヌートを強調した演奏や、5小節をpからクレッシェンドに膨らました解釈など細かい芸当をしている。



34に入る前、最後の4分音符のテヌートもやや重たく演奏させ間を開けて34に入った。ここは一連の旋律で巧妙な演奏をしている。


73の前3小節、3拍目の2つの8分音符にリテヌート(テンポを落とす)を掛けていたのも特徴的な演奏であった。
 まあ次にfffというダイナミックスの変化に対応して、その手前でテンポが落ちると、このfffはさらに効果的な演奏になったことは間違いない。ティーレマンの面目躍如とした解釈であろう。


 ティーレマンがマーラー指揮者として新分野を切り開いた演奏になった重大な演奏会であった。