パスカルの葦笛のブログ

クラシック音楽のテレビやFMの放送からその演奏を視覚(楽譜)で再現します。後から読むだけでどんな演奏だったか理解出来ます。

天才古楽バイオリニスト兼指揮者ゲオルグ・カルワイトとベルリン古楽アカデミーのバッハバイオリン協奏曲2番(1)

未紹介演奏を1つ。1982年東ベルリンで創立された指揮者無しの古楽器演奏団のベルリン古楽アカデミーで、もうすでに来日4回の演奏団である。3人のコンサートマスターが実質の指揮者という。ここは当日のコンマスのゲオルグ・カルワイトがソロと指揮を司る。


  古楽バイオリンの天才演奏家ゲオルグ・カルワイトの写真。


ピンでは紹介も何もないから、プロフィールもわからない。しかし大天才だ。


参考演奏に2つあげよう。
フーベルマン、スタインバーグ指揮ウィーン・フィル。
シモン・ゴールドベルク独奏兼指揮オランダ室内管弦楽団。(1975)
ゲオルグ・カルワイト独奏兼指揮ベルリン古楽アカデミー。(2014・7・7)


第一楽章。

冒頭の開始からして大天才だった。
3つの4分音符、モダン楽器のリタルダンドと言うには、そうとは言えない。前の2つ4分音符は8分音符に縮まれて、その音価は次の休止譜に使われた。3つ目の4分音符にはアクセントが掛けられた。合算して4分音符3つという計算だ。
バッハのバイオリン協奏曲2番は驚きで開始された。


4、5小節はカルワイトはpとfとの強弱で印象付けたのは古楽器の妙だろう。
そこをゴールドベルクはfとスタッカートで演奏して最後にアクセントを付けた。


9小節の後半でpにしたのがカルワイトだ。


20小節のソロからトッテイ(合奏)に移行するところで、カルワイトは随分長い休止をしたのが印象的であった。


44小節、ゴールドベルクは例の低弦を強調すると、カルワイトは44、45小節の前半をfで強く演奏させた。この二人は同じところで拮抗する解釈を示すので、両者只者ではない。以降もそういう解釈を示すのである。


さて最後の反復の所で、これはカルワイトの独壇場になった感がある。

楽譜に演奏を採譜すれば以上のようになる。カルワイトはフェルマータを付けて二倍に延ばした。アダージオで特長的なアクセントを随所に配してフェルマータにもってゆくと、最後の4分音符にトレモロを掛けて、カデンツといったそれこそ楽譜に無い演奏を展開して反復したのである。これは「はい、そうですか」と拝聴する他ないわけである。独創的だ。



反復して演奏が展開して第一楽章のコーダに至るわけだが、ゴルドベルクは低弦でリタルダンドを掛けて伝統的な終結の作法を取ると、ワルワイトは前半で簡単に終結しまった。普通なら3拍目で終結していいわけだが、それでは古楽の名が廃るわけなのだろう。


驚嘆に驚嘆が続く演奏であった。