パスカルの葦笛のブログ

クラシック音楽のテレビやFMの放送からその演奏を視覚(楽譜)で再現します。後から読むだけでどんな演奏だったか理解出来ます。

アゴギークを駆使した熟練のベートーベン4番ウェルバー指揮BBCフィルハーモニックの演奏

この人は既にシューマンの4番で紹介され、テイーレマンを超えた名演を示した人だ。楽譜自体が伸縮性を持ったシューマンの交響曲では、実際の演奏で伸縮性ある演奏を出すのは至難の業だ。それを難なく演じたのがテイーレマンとオメール・メイアー・ウェルバーの二人だけだ。さらにティーレマンを越えていた。今度のベートーベンでも、ベートーベンの記念年、本国ドイツでもさしたる名演が伝えられなかった中、世界の名演の三本の指に入る名演であった。


今夜のベストオブミュージックは、オメール・メイアー・ウェルバー指揮BBCフィルハーモニックでベートーベンの交響曲第四番の演奏が放送された。(2020・3・7)


第一楽章。
106小節、木管楽器が次々に旋律を紡ぎなから橋渡しをするとこで、ワインガルトナーが「気づかない位テンポを落とす」と注釈を入れている所だ。

ウェルバーは極端なほどテンポを落とした。


今現存する指揮者の中でこれほど遅い演奏はないだろう。


そして126小節でfに転じて、128小節からアッチェレラント(加速)させた。


ここいらからウェルバーの異才が出て来たといえよう。


277小節の第一バイオリンをpppの最弱音で演奏させる。この曲全体がpppの最弱音で演奏することが強調された特色が目立った。


第二楽章。
28小節のクラリネットなどもpppで最弱音で演奏され、聴き辛かった。これが彼の好みらしい。コーダのテインパニのソロもほとんど聞こえない最弱音で打たれた。


第四楽章。
184小節のファゴットはp指定だがむしろfで朗々と歌い始めた。これは良い。


302小節のffは強調されるが、316小節のsfの指定を、何故かウェルバーはppかpppで押し通したのが意外であった。

ウェルバーは何故316小節のテインパニのsfを無視したのであろうか。


この点なども異才・奇才の面目であろう。


しかし最もウェルバーが輝いたのはコーダの解釈であろう。

348小節のファゴットでウェルバーは、モルト・リタルダンド(極端にテンポを階段的に落として演奏)させたわけだ。これは中弦に受け継がれた。


いやもう応えられない圧巻の演奏となった。350小節からのアッチェレラント(加速)が生きてきたことは言うまでもなかろう。


なおBBCフィルハーモニックはロンドンのオーケストラではなく、マンチェスターの地方オーケストラのようである。今イギリスではこの指揮者とオーケストラが最高峰の演奏をやっている。