パスカルの葦笛のブログ

クラシック音楽のテレビやFMの放送からその演奏を視覚(楽譜)で再現します。後から読むだけでどんな演奏だったか理解出来ます。

怪物チェリビダッケを圧倒した朝比奈隆「田園」聴き比べ

今日のクラシックカフェは「田園」聴き比べで、古今東西の名指揮者の名演を聴き比べて、最終的な覇者は最後のチェリビダッケに持って行く段取りであったようだ。その前にどういう理由か、朝比奈隆の演奏も一部供された。これがいけないかった。これさえ聞かかかったら、「はい、そうですか」と肯いたのだ。でも聞いてしまって肯けない。後で全曲聞いたわけだが、感心しなかった。


朝比奈隆指揮大阪フィル(EXTONAVCL-84005)2000年録音。


この演奏が古今東西の名指揮者をチェリビダッケがめった切りして覇者になったが、そこえ突然朝比奈隆が現われてチェリビダッケを切り倒して最終的な覇者になってしまった。


第五楽章。
210小節から。



215小節の中弦の刻みの独特な演奏は比類ない感銘を与えた。朝比奈隆は弦にけっこう執拗な注文を出して、第二バイオリンの女史の反発を買うのであるが、彼女から嫌われても固執した甲斐はあったと思う。だってその成果が表れているのだ。


だぶん大阪フィルが鈴木バイオリンを使用していたとしても、欧米の超一流オーケストラよりも良い音を出している。ワント指揮北ドイツ放送響とジュリーニ指揮ウィーン・フィルの演奏をFMで続けて聞いたことがあるが、断然ワントの演奏の音色の方が良かった。物理的にはそれはありえないのだが、録音の良さがあるのだろう。ウィーン・フィルより北ドイツの音の方が音が良いという場合がある。


225-230小節が演奏の頂点をなした。



225-226小節のトランペットを朝比奈はfffで強奏させ、227-228小節ではそう上のffffまで吹かせた。ここで演奏は破壊するのであるが、そこまでして強調する何かを感じたのだろう。


下の紫色色鉛筆はフルトベングラーの演奏だ。彼の演奏も強烈なのだが、朝比奈隆の強烈さの比ではない。そん色があるのがフルトベングラーの方なのだ。


と言う事は朝比奈隆はフルトベングラーを超えたのか。


ケレン味の饗宴だ。


229-230小節の第一バイオリンの下降音を巧みに差別化しているのも凄い。


231-231小節にも比類ない演奏があった。


231小節の第一バイオリンのdimin.の玄妙な音を紡ぐ音色は格別な美しさがあった。そして下降音も明瞭に差別化して演奏させているのは朝比奈隆只一人である。


はからずも朝比奈隆を思い出す一時になってしまった。


朝比奈千足に二代目朝比奈隆を襲名してもらうよりないかも知れない。二代目水谷八重子もいるのだから。