ソプラノの高橋絵理の出色の名演エラス・カサド指揮N響のベートーベン第九
今夜のN響の第九の名演はソプラノの高橋絵理の独唱の濃厚な表現にあったと見た。パブロ・エラス・カサドの指揮も予想外に、楽器の色々を、声部を際立たせて歌わせる妙技は抜群の才能があった。
今夜のNHK交響楽団の定期公演生中継は、例年通りのベートーベンの第九がエラス・カサド指揮NHK交響楽団で演奏された。
第一楽章。
大変速いテンポで開始された。3つのソトボーチェの音もセカセカして聞こえてしまった。
26小節の第一バイオリンも、楔形のアクセントで演奏され、16分音符位の短さになった。その結果いささか重みや厳粛さが失われたといえよう。
第三楽章。
ここからパブロ・エラス・カサドの各楽器のメロディーを次々に歌わせる技術が冴えてきた。これは尋常な腕ではないだろう。
第四楽章。
冒頭弦楽器の叙奏にユニークな解釈があった。
11と12小節だが、リテヌート(テンポを落として)力強く演奏させた。ユニークな演奏だった。28小節の3つの8分音符も弦から松脂が剥げ落ちるくらい粘着力で弦を弾いていた。聞きごたえのある演奏になった。
まあこの演奏の山は、指揮者に注目すれば第四楽章の冒頭の叙奏であったかも知れない。
さてソプラノの高橋絵理の出色の演奏に言及しなければならない。
776、779、786、788、790、796、798の第一拍に強いアクセントを付けて歌ったのであるが、これは余人には出来ない個性であった。そして840-842小節で頂点をなす解釈で歌ったわけだ。
出色の名演となった。指揮者カサドのリクエストという可能性もあろう。
今回のベートーベンの第九は、パブロ・エラス・カサドの指揮振りの良さもさりながら、高橋絵理のソプラノの名演が抜きんでいたと言えよう。
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