パスカルの葦笛のブログ

クラシック音楽のテレビやFMの放送からその演奏を視覚(楽譜)で再現します。後から読むだけでどんな演奏だったか理解出来ます。

ベートーベン交響曲第3番クレンペラー指揮ニューフィルハーモニア管弦楽団1970・5・26

   クレンペラー最後のベートーベン・チクルス、交響曲3番1970・5・26


第一楽章。
大変遅いテンポで開始された。


86-94小節、楽譜通りの指定によって、彫りの深い解釈が見られた。

86小節のフルートでは、モルト・リテヌート(大きくテンポを落とす)をおこなった。さらに93小節ではモルト・リタルダンド(大きく段々テンポを落とす)をした。年齢と共に造形の刻みが深くなったというべきか。


それに続き、103小節からの弦の8分音符の刻みはテンポを落とすというより、モルト・テヌート(音符一杯に弾く)で尋常ではない圧巻の音響を引き出した。それが108小節まで続くのである。

効果は圧巻である。


496小節の木管cresc.指定の所、定石通りのリテヌートが掛けられ、テンポを落とした。


655-662小節はワインガルトナー修正を踏襲して、トランペットに修正をして演奏させていた。


第二楽章。
84-8小節。フルートに対してチェロが見事なエコー効果を対応して格別な美しさを呈していたのが特筆させた。

このフルートとチエロの対話も演奏の魅力となった。


コーダ244-245小節の第一バイオリンに、注目すべきことがあった。

実はワインガルトナーは例の教本では言及していないのであるが、レコードでは245小節の1拍に8分休符が楽譜にあるのだが、実演では8分音符にして演奏しているのである。


クレンペラーがワインガルトナーのレーコードを聞いているわけで、その解釈を踏襲している。楽譜の8分休符ではなくワインガルトナーのように8分音符を演奏しているわけだ。


実に他人のレコードを研究しているのに驚くわけだが、良いと見ると採用する。


これは楽譜の校訂からくる帰結ではなく、美学上の帰結なのだろう。「これはいい」。一つの驚きではある。