ドボルザーク交響曲9番原田慶太楼指揮NHK交響楽団
原田慶太楼はアゴギーク(伸縮)を多用する演奏をおこなった。アゴギーク演奏といえばドイツ正統派の演奏だが、今までとちょっと違うのが出生がドイツではなく、アメリカということだ。アメリカというと機能主義と技術のみが考えられるのだが、アメリカの一部ではこの古典的な古臭い伝統的解釈が生息している。トスカニーニ全盛期といえどもボストンではトスカニーニを一切受け付けなかった。アメリカのフルトベングラーと呼ばれたクーセビツキーが好まれた。その弟子がバーンスタインだった。原田のアゴギークはクーセビツキー=バーンスタイン経由のアゴギークと見た。これは意表を突く現象である。たとえば第三楽章の67小節のファゴットで大きなリテヌートを掛けたのがマタチッチと原田だが、おなじ場所で同じことをしているが、出生が丸で違う。マタチッチはドイツ正統派を継承しているが、原田のはクーセビツキーの影響だと思う。似て非なるものだと思う。
今夜のEテレのクラシック音楽館は、原田慶太楼指揮NHK交響楽団でドボルザークの交響曲9番の演奏であった。(2020・11・20)
第一楽章。
147小節から重たいラレンタンド(テンポを落とす)を長々と掛け始めた。若くてアメリカ仕込みといえば技術主義一点張りが通り相場だが、そこからすると古臭い演奏様式を会得したものだ。これこそが指揮者原田慶太楼の売りだ。
167小節のクレシェンドまでテンポを落とし続けたのは凄い。
第二楽章。
95小節のトランペットで、最後にリテヌートを掛けていた。並みの指揮者には出来ない芸当である。原田がこういう芸風を是とする人であることがわかる。
第三楽章。
67小節のファゴットで、マタチッチと原田が奇しくも同じ解釈に出たのが注目されるのだ。アメリカで教育をされて、しかもアメリカでは少数派の大陸風を好む楽派に傾倒したということがユニークである。
第四楽章。
327小節から極端なテンポを落としてリテヌートを始め、337小節でア・テンポ(元のテンポに戻る)をした。
ドイツ正統派の中からこういうデフォルメを是とする芸風が出たのではなく、アメリカから出たというのが近年稀なことなのだ。最後に延々と音を伸ばしたのも特徴的であった。
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