パスカルの葦笛のブログ

クラシック音楽のテレビやFMの放送からその演奏を視覚(楽譜)で再現します。後から読むだけでどんな演奏だったか理解出来ます。

モーッアルトピアノ協奏曲20番藤田真央ヤング指揮アンサンブル金沢

カデンツに入るテンポの揺れでは、さすがにスダーンが指揮出来なかったのが惜しまれるが、藤田真央の自作のカデンツはスダーン指揮を想定していたものであったろうことは、かえすがえす惜しまれることが倍増した。とはいえモーツアルトへのアプローチの深さを知ったことは新発見であった。


今夜のブラボーオーケストラは、藤田真央のピアノでヤング指揮アンサンブル金沢でモーツアルトのピアノ協奏曲20番の演奏であった。(2021・4・23)


第一楽章。
252-253小節のピアノのソロで、最弱音で16分音符にフェルマータを掛けて沈黙したのは、バドゥダ=スコダの教本の影響であろう。

バドウダ=スコダは、252と253の16分音符にフェルマータを掛けて沈黙しろと提案しているのだが、初めてその提案を耳にした次第である。楽譜のp指定に藤田は従い、二回目はppに弱め、f指定でクレッシェンドした。ルフェビュールはディミヌエンドしてpに至るのである。


296-297小節もまた面白い相違があった。

4分音符2つを、ルフェビュールとブルメンタールはfで弾いて、グルダと藤田真央はfとpに弾き分けている。


第二楽章。
冒頭2小節の最後の音型で装飾音を弾いているのがフェリシア・ブルメンタールで、こんなことをしているのは彼女一人なのだ。(ルフェビュールと互角の演奏をしている。)

何て変なことをしているのだと苦言を呈したい所なのだが、後で藤田真央が楽譜にない装飾音を弾き始めるのである。その先駆的な演奏である。


その前に藤田真央の20小節の演奏を見よう。

アクセント記号の付いた3つの8分音符をリタルタンドで弾いて、ブレスして21小節に入るのである。多分ハスキルの演奏の影響であろうし、テンポを落とさないが長めのブレスをしているのがグルダである。ここら辺の演奏は名手が丁々発止で個性を発揮している所で、藤田真央が巨匠の間に入り込んでいるのが凄い。中曽根がレーガンとサッチャーの間に割り込んだインパクトはあろうものだ。


さて43小節である。藤田真央は装飾音で弾いている。

これは、55、62小節でも装飾音で弾いている。


不思議なのは、84小節のオーケストラのアタッカをピアノも伴奏するのだが、楽譜にもそう書かれているのだが、藤田真央は外して弾き初めている。108小節ではピアノ・パート譜は休みになっているから、根拠はあるわけだ。いずれにしても楽譜の読みの深さに驚かされるわけである。