パスカルの葦笛のブログ

クラシック音楽のテレビやFMの放送からその演奏を視覚(楽譜)で再現します。後から読むだけでどんな演奏だったか理解出来ます。

フルベンとクナの演奏を再現した空前絶後のスウイトナーの「ロマンティック」の演奏

今夜のN響ザ・レジェンドは、スウイトナー指揮N響でブルックナー交響曲第四番「ロマンティック」の放送であった。何が驚いたかといえば、1971年現在、スウイトナーがフルベンとクナの演奏を再現して見せたということだ。二人の演奏を是としているわけだが、たぶんその後急速に二人のように演奏する者が皆無になり、スウイトナー自身でも変更して大人しい演奏に転じる。そういう意味で空前絶後の演奏になった。


まづ第四楽章から見たい。
43小節の金管のコラールに入る前、42小節後半でスウイトナーはリタルランドを掛けた。フルベンは42小節からリタルランド、クナは最後の八分音符2つから掛けている。


この辺は三者三様の個性を発揮しているといえよう。


さて74-84小節の金管の演奏は三者同様の演奏に転じるのである。


74-75小節のトロンボーンとチューバは、フルベンとクナはリテヌートで二倍遅いテンポで演奏させて、76-77小節でア・テンポ(元の速さ)になり、78小節後半でリタルダンドして79小節に突入するのである。なんとも爛熟した後期ロマン主義的、19世紀的な演奏なのだ。スウイトナーは古い時代ならまだしも、現代でこれを再現したわけだ。しかし戦後でも二人は現にそう演奏していたわけで、スウイトナーとは地続きで今を生きていた先輩なのだから、躊躇するいわれはない。二人は十年前は生きていたわけだから、決して昔ではない。


ここがこの演奏の山になった。


第一楽章。
165-168小節の金管のコラールは指揮者の試金石である。各人各様の解釈を披露しているわけだが、スウイトナーは168小節でリタルダンドを掛けた。



これなどもスウイトナーがブルックナー指揮者として一家言のあるところだろう。


216-217小節、クラリネットからホルンに受け継がれる所で、クナは滑らかにテンポが落ちてゆくラレンタンドにしているが、スウイトナーは音が切れてテンポが落ちてゆくリタルダンドにしている。自分の個性を出しているのが好ましい。


第二楽章。
170小節のビオラで、フルベンがラレンタンドさせているかとおもえば、スウイトナーはリタルダンドで弾かせている。あえて異にして演奏させているのが良い。


さてスウイトナーの驚くべきブルックナーの演奏を聴いたわけである。