創見があったミナーシ指揮モーツアルテウム管の「リンツ」
なかなかの創見があったミナーシ指揮モーツアルテウム管の「リンツ」の演奏であった。反ピリオド奏法の牙城であったザルツブルグ・モーツアルテウム管弦楽団であったが、テインパニは完全にピリオド奏法で終始し、落城の感に堪えないが、ミナーシの創見あるモーツアルト解釈で救われる。
今夜のNHKFMのベストオブクラシックは例年通り昨年のザルツブルグ音楽祭の放送であった。リッカルド・ミナーシ指揮ザルツブルグ・モーツアルテウム管弦楽団でモーツアルトの交響曲第36番「リンツ」の演奏であった。(2019・7・28)
フランツ・ブリュッヘンのモーツアルトはとうとうザルツブルグに受け入れられなかったわけだが、ベーグの全盛期にあってワルター・パウムガルトナー・ベーグに引き継がれたロココ・モーツアルトは、今や完全に死滅したわけだ。残るはピリオド楽派のモーツアルト演奏のみである。
第一楽章。
4小節の第二バイオリンの演奏は、完全なピリオド奏法による音色であった。
モーツアルテウム管弦楽団の遠く生前のモーツアルトの時代にまで遡るオーケストラからよもや古楽器の音色を聴くとは考えも及ばなかった。
弦楽器のピリオド奏法とは、1つの四分音符が均一な響きで演奏されるのではなく、山のように小さな入りで音が大きくなりやがて小さくなってゆくのである。
141小節のテインパニで、ミナーシはトレモロで打たせていたのが気になった。
ミナーシは古楽器学派に属する俊英だが、なかなか創見のある人物と判断した。
第二楽章。
45-49小節が、最も注目された。
45-49小節は、ファゴットと低弦(チエロ・コントラバス)が同じメロディーを演奏している。
59-63小節にも再現されるのだが、再現ではどうゆうわけか低弦のみの演奏になっている。そこでミナーシはファゴットにも45-49小節を根拠に、演奏させている。
楽譜には59-63小節は低弦のみの演奏なのだ。
ミナーシはあえてファゴットにも演奏させたわけだ。この人は只者ではない。ミナーシに創見あり、と判断した次第である。お見事である。
ここがこの「リンツ」演奏の胆と見た。
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