パスカルの葦笛のブログ

クラシック音楽のテレビやFMの放送からその演奏を視覚(楽譜)で再現します。後から読むだけでどんな演奏だったか理解出来ます。

手練手管を駆使した猛者ガーリ指揮ウィーン放送響の「新世界」

コンドラシン以来のスリリングな「新世界」であった。あまり地元の二流のオーケストラがザルツブルグ音楽祭に参加するのは類例がないが、ガーリの来歴も不明な指揮者なのだが、登場した理由はよく解る。優秀な人材が他にいないからだ。注目株ということか。


今夜のNHKFMのザルツブルグ音楽祭特集は、ガーボル・ガーリ指揮ウィーン放送交響楽団でドボルザーク交響曲第9番「新世界」の放送であった。(2019・8・3)


第一楽章。
まず22-23小節のティンパニの解釈が注目された。


ガーリは、22小節の後半のティンパニの入りの前に、かなり間を置いたのが特長であった。


ここはストコフスキー以来16分音符を楽譜通り連続の打ち方があり、ガーリも踏襲していた。しかしデイヌエンドがもっと後半の置いていた。ノイマンは16分音符を切って打たせているが、これが地元の伝統的解釈らしい。変わっているのが朝比奈隆で、トレモロなして3つの音符で打たせている。


148小節のバイオリンからラレンタンド(テンポを落とす)を始めて、156小節まで続けた。


これは369小節でもラレンタンドされていて、今回の演奏の特長でもあるのだが、かなりテンポを揺らがせている。


これはガーリが手練手管の猛者だという理由である。


さて見逃せないのがフィナーレのガーリの異常な解釈であった。


第四楽章。
271-273小節のホルンの解釈には、ガーリの並み並みならない蘊蓄があった。


271小節のホルンは、リテヌートで演奏された。極めてテンポが落とされ、異常なほどであった。それは172小節で改善され、273小節で本来のテンポに戻るといったものであった。ここにもガーリの手練手管を垣間見るのである。


さて演奏はコーダに近ずくと、328小節で極端なリテヌトが掛けられるのであった。


おそらくガーリの指揮ぶりの見せ場となった。


音符は滑り止めに阻止されて、とても進行しないのである。一歩一歩各音符は確かめるように、あるいが演奏が停止したといってもいいほどに置かれた。


これは尋常な演奏ではないかと思わせるほどに、ガーリの解釈は徹底しているわけだ。


なるほどここが演奏の山になった。さて最後の終結のフルマータの付いた和音も三倍の長さに延長されたようである。異常ずくめな「新世界」で、ザルツブルグ音楽祭の全プログラムは、この冴えない指揮者と楽団に喰われてしまったのである。