パスカルの葦笛のブログ

クラシック音楽のテレビやFMの放送からその演奏を視覚(楽譜)で再現します。後から読むだけでどんな演奏だったか理解出来ます。

決定盤「展覧会の絵」の出現鬼才ハンヌ・リントウ指揮オランダ放送フィル

チエリビダッケ今亡き以上「展覧会の絵」を面白く聴かせる指揮者はハンヌ・リントウ以外いまい。そう確信する名演であった。


今夜のNHKFMのベストオブクラシックは、ハンヌ・リントウ(1967-)指揮オランダ放送フィルによるムソルグスキー作曲ラベル編曲の「展覧会の絵」であった。リントウは今年52歳の中堅指揮者、今一番油の乗切った演奏をする指揮者だ。


初っ端から鬼才振りが発揮された。演奏が始まった最初の「プロムナード」からして尋常な演奏でなかった。2-2小節からpの演奏にし、4ー1の最後2つの4分音符にポコ・リテヌートを掛けて、テンポを落とす始末だ。最後は極端なリタルランドを掛けてテンポが落とされた。


チエリビダッケが恐れ入るような大胆なデフォルメだ。
たぶんまだCD録音もないのだろうが、CDが出たら決定盤になること間違いなしの演奏である。


第二曲の終結でも、リントウはサクソホーンをデイミヌエンドさせないで強く演奏させて終えたのも印象的であった。


この「展覧会の絵」の演奏の白眉は、第七曲「ビドロ」であった。


練習番号42の前後のリントウの解釈は独自のものであった。
フルートはffで強調され3つの8分音符は独特のテンポで演奏されると、これまたテインパニの一種変則的なリズムで打たれて、チエリビダッケ顔負けの演奏を示した。


こんな「ビドロ」の演奏は誰にも初体験と言えるユニークさであった。


第六曲「サムエル・ゴールデンベルクとシュミール」も、終結でテンポが落とされた。


さて最大の興味は、第九曲「バーバ川」終結にあった。


楽譜にはトランペットでfで吹けという指定であったが、リントウはppで演奏させたのであつた。


これなどもリントウの鬼才振りが発揮された。現在彼以上の「展覧会の絵」の演奏が出来る者はいまい。