パスカルの葦笛のブログ

クラシック音楽のテレビやFMの放送からその演奏を視覚(楽譜)で再現します。後から読むだけでどんな演奏だったか理解出来ます。

恐ろしく変化したモーツアルト・オペラの演奏様式ヘンヒェン指揮英国ロイヤル・オペラの「ドン・ジョバンニ」

オペラファンタスティカの「ドン・ジョバンニ」は、英国ロイヤル・オペラの2019・10・8のピチピチの生きのいい公演の放送だ。そして別公演の映画が今年1月日本各地で上演されたもようである。これからシネマで上演されるそうだ。力が入っている。


指揮のヘンヒェンを聴きたいのが本音だったが、驚いたのはベルカント唱法が歌謡曲のコブシさながらになり、レシタテイーボ(叙唱)のハープシコードが廃止され、それに代わってコントラバスになっていることだ。これは古楽器の影響だろう。


まずヘンヒェンの演奏で、序曲の終結部だ。


最後の3つのオーボエの旋律で終結するのだが、フルベンはラレンタンドで切れ目なくテンポを落とした。それに対してハルトムート・ヘンヒェンは、リタルランドでテンポを落としたので、2つと3つの間に「間」が空(あい)た。これは良かったな。


しかし基本がモダン楽器を使用しての古楽器風の演奏である。


さて序曲が終わるとすぐレポレッロのアリアになるが、ロベルト・タリアビーニというバス歌手が歌っている。


全音符の後半から、タリアビーニはトレモロを付けて歌っているのには驚いた。まさに演歌のコブシである。これが昨今の古楽器の歌声に対する影響と見た。


デル・マーの校訂したベートーベン交響曲全集の7番では従来楽譜にはないカデンツを楽譜に興して再現させている。


そう言えば、この楽譜の上のバイオリンを見れば、16分音符が小刻みに揺れているわけで、古楽器奏法から見ると、トレモロ、カデンツがあった形跡があるということになった。歌手は楽譜にはないがそう歌っていたことが解明されてきた。


レポレッロのアリアの最後、やはりタリアビーニはフェルマターを付けて長く延して
歌った。トレモロでころがすように歌った。歌謡曲のゴブシだ。


念のために、クレンペラー指揮ギャウロフで聞いてみたが、あっされ楽譜通りに歌った。


ところで最後に従来ハープシコードがロココ調の軽ろやかな演奏で、セリフが述べられる叙唱の変化に言及したい。


楽譜にはハープシコードがあり、その下にチエロ・コントラバスがある。
この録音では最初にハープシコードの音がすると、後は時々コントラバスが鳴るだけである。従来のモーツアルト・オペラではハープシコードの華麗な音に乗ってセリフが無意味に交差するのだが、今のモーツアルト・オペラでは演劇として展開させているようだ。


ここが最近のモーツアルト・オペラの変化した所らしい。