パスカルの葦笛のブログ

クラシック音楽のテレビやFMの放送からその演奏を視覚(楽譜)で再現します。後から読むだけでどんな演奏だったか理解出来ます。

フルトベングラーの正反対の解釈をしたサロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団の「魔弾」序曲

昨今は序曲に命を懸けた演奏というものがなくなったが、久しぶりの名演であった。白眉はコーダの演奏であった。フルトベングラーはここで極端にテンポを落とすのだが、サロネンは正反対の解釈に出て、アッチェレランドという加速に出た。


今夜はサロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団でウエーバー作曲歌劇「魔弾の射手」序曲の演奏であった。(2020・1・16)わずか数か月前の演奏だというのが有難い。


ホルンが活躍する音楽であるが、濃厚な解釈があった。


17小節のホルンで、クレッシェンドの頭の4分音符にはフェルマータが掛けられ、相当長く延された。
24小節のアクセント記号にもsfという解釈にしてサロネンは強調した。


おしなべてこの楽団のホルンは名手揃いで、それを聞かせたかったようだ。(120小節のホルンとファゴットが重なる所は格別の美しさがあった。)
71-72小節のテンパニにも独特の解釈があった。


さてこの序曲の演奏の白眉はコーダに入る所の解釈であった。


288小節のバイオリンの3拍から、291小節に至る所をフルトベングラーは極端にテンポを落とすのである。カルロス・クライバーもフルベンとは異なったアプローチで同曲異句をやっている。そこを見ると、カルロス・クライバーはフルトベングラーを越えようとしていたのだなと思えるわけだ。


さて、サロネンであるが、むしろアッチェレランドして加速するのである。これは見ごたえ聴きごたえのある演奏となった。サロネンはフルトベングラーの演奏を衆知しているわけである。だからこそあえて正反対の解釈に出たのである。見事であった。


別の言い方が許されるとしたら、フルトベングラーとサロネンは同格に並んだな、ということである。見事な演奏であった。