パスカルの葦笛のブログ

クラシック音楽のテレビやFMの放送からその演奏を視覚(楽譜)で再現します。後から読むだけでどんな演奏だったか理解出来ます。

新しいベートーベン像の創造ネルソンス指揮ウィーン・フィルの1番

新しいベートーベン像の創造がネルソンスの演奏で提示された。古楽器奏法で伝統的解釈はずたずたに切り裂かれたが、ネルソンスによって再生されたといえよう。古楽器奏法の微塵もない演奏で有りながら、古臭い演奏は新しい酒袋に入れられて、異臭を放つどころかすがすがしい響きとなって聞こえる。


今朝の「音楽の泉」は、昨年秋にネルソンス指揮ウィーン・フィルでベートーベン交響曲全集が完結し、1番が紹介された。


第一楽章、52小節でpに落とされ4拍からfに転じる解釈は、その演奏の初端から異彩を放つものであったが、本領は第二楽章で発揮された。


第二楽章。
33小節バイオリンで、デルマーの校訂ではタイ記号は印刷ミスということが発見された。古楽器奏法の面目を発揮するところだが、ネルソンスはこの発見を取り入れて、切って演奏させているのだ。この配慮はさすがである。


163小節のオーボエで、ワインガルトナーはこのオーボエはクレッシェンドにすべきと命じているのだが、未だかつて誰も実践せず、ネルソンスが素直に従っている。


ぜひ、このオーボエのfの強奏を聞いてもらいたい。これが最大の聴き物だ。


今では誰も演奏しないのだが、古楽器奏法に聞く耳を持たないネルソンスが、ワインガルトナーの意見に聞く耳を持つというのがいい。


第三楽章。
121小節の第一バイオリンで、デルマーの校訂ではクレッシェンドが正しいということになっている。

ネルソンスも新しい校訂に従ってデクレッシェンドをクレッシェンドにして演奏させているのである。


第四楽章。
105小節の第一バイオリンの後半でppにしているのがネルソンスである。


ネルソンスの独特の解釈で、それをお楽しみあれ。


同様に、191小節からppにしているが、これもネルソンスの独特の解釈である。


ネルソンスにはこういう独創的な解釈の妙があり、これを味あうのが伝統的演奏の妙なのだから、枯渇した古楽器奏法の無味乾燥な味に慣れた人には、一種の潤いを与える演奏になっている。