パスカルの葦笛のブログ

クラシック音楽のテレビやFMの放送からその演奏を視覚(楽譜)で再現します。後から読むだけでどんな演奏だったか理解出来ます。

ハイティンクの引退公演ウィーン・フィルでブルックナー7番

ステッキを使って舞台に登場したハイティンクには驚かされた。小泉信三か田中美知太郎が現れたような面(つら)がまえは男の風格と申すわけだろう。左翼退治に辛辣な舌鋒を発揮した毒はハイティンクにはないが、風雪に耐えた男が持つ面構えである。


今夜のクラシック音楽館は昨年のザルツブルグ音楽祭でハイティンクの引退公演になったハイティンク指揮ウィーン・フィルでブルックナー交響曲7番であった。(2019・8・31)


第一楽章。
例えば387-390小節は、ティーレマンとハイティンクとでは、同じウィーン・フィルの演奏ながら、水と油の違いのある演奏になった。ハイティンクとは水の如き演奏を是とする指揮者なのだ。


122小節だが、ハイティンクには珍しく、ポコ・リタルランドとテンポにアゴギークを付けた。


第二楽章。
192小節のホルンで、後半のdim.指定をハイティンクはあえてfffで演奏させた。



第四楽章。
63-64小節のフルートに、ラレンタンド(テンポを落とさせて)演奏されたのも珍しいだろう。


ハイティンクはインテンポ指揮者、練習指揮者を趣旨としていた。カラヤンのように正味一時間に満たない演奏会で練習が過度に少ない近年の傾向において、名門オーケストラから異常なほど重宝がられた。ともかく練習が足りなく、練習に飢えていた。画面を見ていると、小泉信三の面構え、仕草が肉薄するのが感銘深かった。