パスカルの葦笛のブログ

クラシック音楽のテレビやFMの放送からその演奏を視覚(楽譜)で再現します。後から読むだけでどんな演奏だったか理解出来ます。

メヌエットで装飾音で演奏させた山田和樹指揮N響モーツアルト29番

第一楽章はオーソドックスな古い解釈だったのに、第三楽章メヌエットでは今一番先鋭的な楽譜にはない装飾音で演奏させたものだった。


今夜のNHK交響楽団定期演奏会は、山田和樹指揮NHK交響楽団で、モーツアルト作曲交響曲29番の演奏であった。(2020・9・12)


第一楽章。
テンポも遅いし、旧来の伝統的な解釈に終始したのは今では新鮮ですらある。一言でいえばテラッセンデュナミーク(階段的)でピアノやフォルテを付けた演奏であった。現代ではモーツアルトはフォルテやピアノは対比的に演奏されるのが時代に合致した演奏法であるということになっている。


12小節でも、13小節にfがあるが、あえてここからfに演奏させた。


同じことは45小節のfにも言えた。


山田和樹は44小節の後半でfに演奏させた。
77-78小節の4つある2分音符はfで演奏されているのだが、4つ目でpに演奏させた。こういう解釈は古楽器派の最も嫌う方法で、それだけ山田和樹は旧派の美学に立つているのだろう。
90小節でも、ディミヌエンドさせている。



古楽器派はディミヌエンドを18世紀の演奏に最もそぐわない19世紀のロマン主義の産物として毛嫌いするわけだ。


第三楽章。
一転して山田和樹はトリオの2小節目、一回目は楽譜通りに演奏させて、二回目では驚嘆の装飾音を付してバイオリンに演奏させているわけである。


正直これには驚かさせた。
まるで伝統派と思っていたら、最新のモーツアルト研究を取り入れているわけだ。
モーツアルトではメヌエット楽章が鬼門で、正直どれが正しいと言いきれない。古楽器派の解釈は仮説であって正しいという証拠がない。正しい仮説というのが無難な結論だろう。
装飾音を入れて演奏するならここが妥当だが、別の所では不可かというとそうでもない。


ということで日本人には一番不得手なところであろう。山田和樹の大胆な決断に賞賛。