パスカルの葦笛のブログ

クラシック音楽のテレビやFMの放送からその演奏を視覚(楽譜)で再現します。後から読むだけでどんな演奏だったか理解出来ます。

出色の第三楽章の演奏しかもチンドン屋のメロディーも復活したルイージ指揮N響のマーラー1番

マーラーの1番の第三楽章の演奏が出色だった。しかもチンドン屋のメロディーも復活したルイージの見識に脱帽だ。彼はこの一曲でヨーロッパ中のオーケストラを席巻した。あまりの才能にコリン・ディービスに相談しないで次期総監督に勝手に決定した。それもうなずけるのだ。


今夜のN響レジェンドは、ルイージ指揮NHK交響楽団でマーラーの交響曲第一番巨人の演奏だった。(2017・4・15)


後半の演奏が素晴らしかった。第三楽章。
3小節のコントラバスの演奏だが、どうもソロ(独奏)のようだ。これは初演の復活である。


そして驚くべき演奏が、15小節のチューバをfで強調したルイージの演奏だ。23小節まで強奏させていた。これはルイージの独創性と言わなければならない。余人はまったくやっていない。


さてもつと驚くべきは、38小節以下の演奏だ。ルイージは極端にラレンタンド(テンポを落とす)で演奏させた。


しか45小節のクラリネットに至ると、これまた極端なアッチェレラント(テンポを速める)でクラリネットを演奏させた。

45-49小節のクラリネットのメロディーは、まさに日本のチンドン屋の定番のメロディーなのである。チンドン屋とマーラーがクラリネットで同じメロディーを吹いているわけだ。


原曲は、ドイツでは有名なオペレッタ「ゼッキンゲンのトランペット吹き」に出てくるメロディーだといわれている。それならトランペットだろうという話になる。


これが又日本に輸入されて大正時代に浅草オペラに取り入れられて、軽妙で愛愁を帯びた旋律が日本人に愛されて、大人気となった。いつしかチンドン屋の持ち歌となり、チンドン屋によって日本各地津々浦々まで広められたのである。


ルイージはそんな事情は知らないが、ボヘミアの土臭いマーラーが少年時代聞いた軍楽隊の音は、やはりこういう音なのだろうと考証したわけである。それがずばり正解なのだ。


ボヘミアの軍楽隊と浅草オペラ・チンドン屋が大衆音楽で共通したのである。


この第三楽章では、ルイージはクラリネットの行進曲ではアッチェレラントで速く演奏すると、それが終わればラレンタンドでテンポが落ち、演奏を伸縮(アゴギーク)させるのである。だから余計クラリネットの行進曲はチンドン屋そっくりになる。これが出色の演奏となった。


この才能はドレスデンの当局でも騙される。


第四楽章。
終結部、730小節で、テインパニにfffで打たせて度肝を抜いた。


私のメモによると、2017・3・26のデンマーク放送管弦楽団でも同様にやった。N響は4・15である。この時のルイージは凱旋将軍になったようだ。人生の一番上げ潮であったに違いない。